オブザーバビリティとモニタリングの違いとは?【図解でわかりやすく解説】

監視・可観測性

システム運用に携わっていると、「オブザーバビリティ」と「モニタリング」という言葉をよく耳にしますが、「結局どう違うの?」と感じたことはありませんか?

この記事では、オブザーバビリティとモニタリングの違いを比較表・具体例・実際の設定例を交えてわかりやすく解説します。現場でどちらの考え方を採用すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

オブザーバビリティとモニタリングの違いを一言でいうと?

モニタリング(監視)は「既知の問題を検知する仕組み」、オブザーバビリティ(可観測性)は「未知の問題まで原因を特定できる能力」です。

モニタリングは「CPU使用率が90%を超えたらアラートを出す」のように、あらかじめ想定した異常を検知します。一方、オブザーバビリティは想定していなかった障害が起きたときに「なぜそれが起きたのか」をシステムの外部出力(ログ・メトリクス・トレース)から追跡・特定できる状態を指します。

つまり、モニタリングが「What(何が起きた?)」に答えるのに対し、オブザーバビリティは「Why(なぜ起きた?)」まで答えられるという違いがあります。

モニタリング(監視)とは?

モニタリングの特徴

モニタリングとは、システムの状態を継続的に監視し、あらかじめ設定した閾値を超えた場合にアラートを発する仕組みです。従来のインフラ運用では、このモニタリング(監視)が主流でした。

具体的には、CPU使用率、メモリ消費量、ディスクI/O、ネットワークトラフィックといったメトリクスを収集し、ダッシュボードで可視化します。

モニタリングの使いどころ

モニタリングが効果を発揮するのは、構成がシンプルで障害パターンが予測しやすいシステムです。例えば、単一サーバー上で動くWebアプリケーションや、オンプレミスの社内システムなどでは、モニタリングだけで十分に運用できるケースが多いです。

実務ではPrometheusでメトリクスを収集し、Grafanaでダッシュボードを構築するのが定番の組み合わせです。以下はPrometheusのアラートルール設定例です。

# prometheus-alert-rules.yml
groups:
  - name: basic-monitoring
    rules:
      - alert: HighCpuUsage
        expr: 100 - (avg by(instance) (rate(node_cpu_seconds_total{mode="idle"}[5m])) * 100) > 80
        for: 5m
        labels:
          severity: warning
        annotations:
          summary: "CPU使用率が80%を超過({{ $labels.instance }})"
      - alert: HighMemoryUsage
        expr: (1 - node_memory_MemAvailable_bytes / node_memory_MemTotal_bytes) * 100 > 85
        for: 5m
        labels:
          severity: critical
        annotations:
          summary: "メモリ使用率が85%を超過({{ $labels.instance }})"

このように、モニタリングでは「何を監視するか」「どの閾値でアラートを出すか」をあらかじめ定義しておく必要があります。

オブザーバビリティ(可観測性)とは?

オブザーバビリティの特徴

オブザーバビリティは制御理論に由来する概念で、「システムの外部出力から内部状態を推測できる度合い」を意味します。IT分野では、ログ・メトリクス・トレースという3つの柱(Three Pillars)を組み合わせて、予期しない問題の根本原因まで追跡できる能力を指します。

モニタリングが「あらかじめ定義したチェック項目」に限定されるのに対し、オブザーバビリティは「まだ想定していない障害」にも対応できるのが最大の強みです。

オブザーバビリティの3つの柱

ログ(Logs)は、アプリケーションやシステムが出力するイベント記録です。エラーメッセージや処理結果など、個別の出来事を時系列で追跡できます。

メトリクス(Metrics)は、CPU使用率やリクエスト数など、数値で表現されるデータです。時間経過に伴う傾向を把握し、異常を検知するのに適しています。

分散トレース(Traces)は、マイクロサービス環境でリクエストが複数のサービスをまたいで処理される流れを追跡する仕組みです。どのサービスで遅延が発生しているかを可視化できます。

オブザーバビリティの使いどころ

オブザーバビリティが特に威力を発揮するのは、マイクロサービスアーキテクチャやKubernetesベースのコンテナ環境など、構成要素が多く障害パターンが予測しにくいシステムです。

以下はOpenTelemetryを使った分散トレースの実装例です。

# Python + OpenTelemetry でトレースを計装する例
from opentelemetry import trace
from opentelemetry.sdk.trace import TracerProvider
from opentelemetry.sdk.trace.export import BatchSpanProcessor
from opentelemetry.exporter.otlp.proto.grpc.trace_exporter import OTLPSpanExporter

# トレーサープロバイダーの設定
provider = TracerProvider()
processor = BatchSpanProcessor(OTLPSpanExporter(endpoint="http://otel-collector:4317"))
provider.add_span_processor(processor)
trace.set_tracer_provider(provider)

tracer = trace.get_tracer("order-service")

def process_order(order_id):
    with tracer.start_as_current_span("process_order") as span:
        span.set_attribute("order.id", order_id)
        # 在庫確認サービスへのリクエスト
        with tracer.start_as_current_span("check_inventory"):
            inventory = check_inventory(order_id)
        # 決済サービスへのリクエスト
        with tracer.start_as_current_span("process_payment"):
            payment = process_payment(order_id)
        return {"status": "completed"}

このコードでは、注文処理の中で在庫確認と決済がそれぞれ独立したスパン(処理単位)として記録されます。障害発生時に「決済サービスで3秒の遅延が発生」といった具合に、問題箇所を即座に特定できます。

オブザーバビリティとモニタリングの違いを比較表でチェック

比較項目 モニタリング(監視) オブザーバビリティ(可観測性)
目的 既知の異常を検知・通知する 未知の問題を含め根本原因を特定する
答えられる問い What(何が起きた?) Why(なぜ起きた?)
データソース 主にメトリクス ログ・メトリクス・トレースの3つの柱
適したシステム 単純な構成(モノリス、単一サーバー) 複雑な分散システム(マイクロサービス、K8s)
アプローチ 閾値ベース(受動的) 探索型・仮説検証型(能動的)
セットアップの手間 比較的シンプル 計装(instrumentation)が必要で手間がかかる
代表的なツール Zabbix、Nagios、CloudWatch Datadog、New Relic、Grafana + Tempo
コスト感 比較的低コスト データ量に応じてコスト増加しやすい

ポイントは、オブザーバビリティがモニタリングの「上位互換」ではないということです。モニタリングはオブザーバビリティを実現するための基盤であり、両者は補完関係にあります。

どっちを採用すべき?シーン別おすすめ

モニタリングで十分なケースとしては、社内向けの管理ツールやシンプルなWebサイトなど、構成要素が少なくダウンタイムの影響が限定的なシステムが挙げられます。PrometheusとGrafanaの組み合わせで、メトリクス監視とダッシュボードを構築すれば事足りるでしょう。

オブザーバビリティが必要なケースとしては、ECサイトやSaaSプロダクトなど、マイクロサービス化された複雑なシステムが該当します。複数のサービスが連携して動いている環境では、モニタリングだけでは「どのサービス間の通信で障害が起きたのか」を突き止めるのが難しいため、分散トレースを含むオブザーバビリティ基盤が欠かせません。

段階的に導入するのが現実的です。まずモニタリングでメトリクス監視とアラートを整備し、システムの複雑化に合わせてログ集約→分散トレースの順にオブザーバビリティを拡充していくアプローチがおすすめです。

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まとめ

オブザーバビリティとモニタリングの違いをまとめると、モニタリングは「既知の問題を閾値ベースで検知する仕組み」、オブザーバビリティは「ログ・メトリクス・トレースの3本柱で未知の問題まで根本原因を突き止められる能力」です。

どちらか一方を選ぶものではなく、モニタリングを土台にしながらオブザーバビリティを段階的に導入していくのが実務では一般的です。まずは現在のシステム構成を見直し、モニタリングが不足している部分から手を付けてみてはいかがでしょうか。

オブザーバビリティやSREについてさらに深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。

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